2014年02月25日

結局潰れてしまうパン屋さんの傾向 その2

 こんにちは、パン助です。

今日は前回の続きで、職人さん視点の苦しみを分析していきましょう。


 職人さんはとても集中力を使います。
仕込みをしている時、粉やら砂糖、イーストの分量を頭に記憶しておいて、頭の中で計算する人も多いでしょう。
窯を担当している時、発酵時間から焼き時間、温度、火力、クープの角度、ホイロに入るパンをどのタイミングで焼くか、段取りでいっぱいでしょう。
成形を担当している時、生地の個数や分割のグラム、中の具材の分量などいつもと同じであるように、作る時間も分割も1日のリズムができているでしょう。

 
 ところが、オーナーがパンを知らない場合、そんなことをおかまい無しです。

オーナー「ちょっとアレやっといてくれる?」
職人「え、あ、ハイ」(なんで今?パンより大事?)

「ちょっと話あるんだけど、すぐ来てくれ」
「ハイ」(こっちには無いんだけどな)

「そんなの他の人に任せて会議にすぐ来い」
「あ、、、ハイ」(任せられない仕事なんだけどな、っていうか、「そんなの」が仕事だよ!)

「昨日の新作のパン売れ残ったけど大丈夫?」
「はぁ…」(大丈夫とかきかれても、困る)


「そういえばさっき予約入ったから、午後までに焼いておいて」
「え、、、ハイ」(いやいや物理的に無理だから、発酵時間的に無理だから)

「売上よくないね〜」
「…そうですね」(だからなんだよ、職人が原因みたいに言うなよな)

「へ?ケーキはできないの?」
「すみません」(パン職人なんですけど?)

「いいから早くやってくれる?」
「ハイ、、、」(いいけど少し黙っててくれる?)



 
 いやぁ、胸が痛みます。…じゃなかった、許せませんね、そんな経営者!


職人「あの、今仕事中なんですけど、あとじゃダメですか?」すらも言えない雇われの立場の職人達、いや、言わせない経営者達がたくさんいます。
 
 職人やパン作りをしている人ならわかるのですが、製造の全体の流れもそうですが、一人一人のリズムもすごく大事です。
これがうまくいくことによって、製造時間を何時間も早め、流れができることで自然とミスがチェックできたり、間違いが起きるとリズムが乱れるので、皆が気付きやすくなるのです。

 そういったリズムを壊しながらも、大体忙しい時間に空気を読まずに現れる経営者達は、ダメだしばっかりしてねぎらいの言葉も無いため、この恩知らず!パン知らずと!言われ、自然のうちに嫌われていくのです。

 また、経営者は経営者で、一応雇うという事は、スタッフの給料を、もとい家族の面倒をみるようなものなので、考えないといけないことは多々ありますし、気持ち的には年中無休で仕事をしているようなものなので、あまりに神経質になりすぎても気持ちが参ってしまうので、ある程度売上が安定しているなら、細かく口を出さずともうまくいく場合もあるのですが、僕が見て来た中でもやはり、経営者がいて職人がいるパン屋さんでは仲良くやっている所は非常に少なかったです。

 しかし、経営者が職人さんやパートさんの嫌われ役になることで、敵を作る事で職人さんとパートさんが仲良くまとまる集団心理が働くのですが、経営者はこれはこれで嫌がってイライラするケースも多いです。

 上記の場合問題としては、経営者からすれば、売上をきちんと取れればそれでもイライラはやや解消されるのですが、これで売上も悪いとなると、自分が嫌われ者で売上も悪いので、イライラを職人にぶつけることがあるのです。

 まぁ、このケースを僕はただの下っ端のバイトの立場でみていたのですが、経験もあり、衛生観念も優れていて、仕事も常に全力の職人さんが、パンの経験が全くない経営者の思いつき発言に振り回されて、最後は鬱病にまでなってしまうという、とても最悪なケースでした。

 そう、職人さんは真面目なのです。
言われた事はきちんとやるし、言われた通りに実行もしているのです、でも、売上が悪いとダメ出しをされていました。どうすればいいかの質問に、経営者は「それは君が考えるんだろ」と突き放していました。
 
 僕なりの分析をすると、その経営者は見栄っ張りでお金しかありませんでした。すぐ隣には市場がありお客さんはたくさんいるのですが、そのパン屋にはほとんど来ません。味が悪いわけでもありません。
 その職人さんは真面目でしたが中の作業は超優秀でも、売り場にでてお客さんとコミュニケーションを取る事はほとんどありませんでした。スタッフも職人や経営者の指示に従うので、今の時代自ら進んで何かをやる人は少ないです。問題起こしたく無いですからね。
だから、このお店には、お客さんを呼び込むための営業力と、演出が圧倒的に欠けていたのでした。

 その原因として細かく言うと、製造室からあふれるパンのニオイは全て市場の方向とは真逆の方に逃げていました。
売り場に並べるパンは、お客さんがパンをトレーにとる方式ではなく、わざわざ焼いたパンを冷まして袋に詰めて、店の目の前に並べていました。それをお客さんが買い物かごに入れてレジに持って行くタイプ。

 仕組みもめちゃくちゃで、焼き上がったらベルを鳴らすのですが、売り場にお客さんがいないのと、ベルを鳴らす人は声が小さいのか「焼き上がりました」の一言が全く聞こえません。しかもベルを鳴らしても、パンを冷ましてから袋に詰めるので、市場のお客さんからすれば、どこか遠くでベルが鳴ってるな、なんかパンが置いてあるなぐらいにしか思わないでしょう。ニオイが無いんですから、コンビニパンと変わりません。

 ちなみに、そんなバイトでも、僕は焼き上がったパンをわざわざ市場から見えるところに運び、そこで焼きたてですよーと言いながら、目の前に鉄板と番重を運んで焼きたてアピールしながら売っていました。ただ、毎日入る職場ではなくて、かけもちのバイトだったので、途中からほとんど行かなくなり、その頃にはお客がどんどん引いて売上がどんどん下がっていったのを覚えています。わずか3年でそのパン屋は幕を閉じました。


真面目な職人さんは、売上が下がると、自分がサービス残業をして、スタッフの出勤日数を削ったり、在庫はきっちり一切のロスが無い様に発注をして、パンは売れ残ると廃棄する方針だったので、お店が閉まる頃にパンが無くなる様な製造数へとシフトしていきました。パンも利益重視のためハード系を増やしたりしていたのですが、袋に入れる事が前提だったのでこれも功をなさなかったのでした。
 
 しかし経営者はそんな職人さんに対して、「まだ(職場に)いたのか?」と言ってサービス残業なのに「早く帰れ」と言ったり、「もうパンには期待してないから、いつでも辞めてくれていいよ」と言っていたのでした。


 ここで大きな柁を取るのは経営者の仕事なんですよね。

売上を上げるために、市場にパンを置かせてもらう、売り子をつけて試食を積極的に行う、パンのニオイの換気扇を市場方面につける、パンを袋にいれるのをやめてむき出しで売る、製造室を売り場や市場から見える様にするなど、いくらでも工夫できることはあったんです。(僕は下っ端バイトですので、思っていたり口に出しても、「そんな簡単な事じゃ無いんだ」と言われたりもします。悲しいかなどんなに解決策が正論であろうと、バイトには説得力がないのでした。僕からすれば「そんな難しい事じゃ無いんだ」けどな。) 

 まぁ、その後は冷凍成形生地を並べてオーブンで焼くパン屋さんになりました。


職人さんはその後鬱病が発覚し、休業、治療をしながら現在は別の職についています。
 経営者は撤退しましたが、お金はあるみたいでまた同じ過ちを繰り返すことでしょう。


 
 え〜、パンは人を幸せにもし、不幸にもする。


 職人だけ、経営者だけ、ではどうにでもならないこともあるようです。


みんな仲良くしましょうね。


 それでは、パン助でした。
 
 
 
 
posted by pansuke at 13:24 | Comment(9) | 開業前に必要な知識